中国がイーサリアムなどのICOを規制、その実態と国内事情

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中国がイーサリアムなどのICOを規制、その実態と国内事情

2017年9月4日中国人民銀行通称PBoCが仮想通貨を使用した資金調達であるICOを中国国内で企業または個人により行うことを禁止するという発表を行いました。このICO禁止のニュースは世界中で大きな波紋を呼び、PBoCが再度「ビットコインとイーサリアムは政府によって発行されたものではない」と追記したことからかビットコインをはじめとする仮想通貨が禁止されたという噂が広がり混乱を引き起こしました。

イーサリアム・ジャパンでは中国の仮想通貨事情に詳しい最高国家行政機関の直属事業の中国科学院に務めるDr. Eric Zhao氏に今回のPBoCのICO禁止と今後の中国国内での展望について詳しくお話を伺いました。

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1.中国人民銀行(PBoC)がICOを禁止する

今回のPBoCの発表を要約すると

1.中国国内でのICOによる資金調達は企業または個人であっても今後は一切行うことを禁ずる。

2.ICOプラットフォームは取引または交換サービスの提供を禁ずる

3.調達された資金は投資家に返却されるべきである

となっています。

1-1.中国国内での影響

Eric氏はICO禁止は告知されたばかりであり、この影響は中期的に見た際少しずつ露見していくだろうと予想しています。同日、このICO禁止を受け実際にICOを行ったプロジェクトは返金を即座に発表しました。

1-1-1.中国でのICOの現状

Eric氏の見方によると現在までに行われてきた中国でのICOは99%が実態のない詐欺であるとしており、実際にICOを行った一部の企業はオフィスさえ存在していないという報告があったと指摘。また中国国内にとどまらず、数ページのホワイトペーパーと数枚の写真があるWebサイトのみでICOを行うプロジェクトは数十億円を正当な理由で調達することができないと世界中で議論を呼んでいる点を指摘しています。

これらのことを受けPBoCが投資家保護の観点を重点に置き、今回の発表に至ったと考えられます。

1-1-2.なぜ詐欺ICOが成り立つのか?

Eric氏は中国の投資家達は多くのICOがプロジェクトとして長期的に生き残れず、実際の価値がない仮想通貨であるというのは理解しているとし、

「投資家はリスクを理解した上で投資をしており、一度取引所に上場されれば価格は高騰するため、大きな損をしない限り投資を続けるでしょう。この考え方はビットコインやイーサリアムにより最初に学んだにも関わらず、ICOはより効率的に儲かると考え、資金を考えなしにICOにつぎ込みギャンブルをする未熟な投資家を誘い込むこととなることとなります。そして詐欺氏達は投資家の資金を持ち逃げするという仮想通貨のエコシステムにおいて悪影響を及ぼすこととなるでしょう」

と述べています。これは日本でも同様に無視できない点であり、実際にプロジェクトとしての価値がなく、更にプロダクトをローンチさえできないコインを長期的にICOとは別に販売しいつまで立っても売却できないという詐欺プロジェクトや、海外の受け取り方もわからないプロジェクトのICOへの投資なども見受けられます。

1-3.中国のICO禁止による長期的影響

ICOによるギャンブル投資という問題点などを考慮し、Eric氏は長期的にこのICO規制を見た際に、下記の様にポジティブにとらえています。

「中国はこの規制を経てICOは企業の情報開示と、より投資家保護を重視することにより投機でさえないギャンブルICOとしてでなく投資の正しい選択しの一つとして投資家に一般的に提供できるでしょう」

また短期的に見ると難しく、ビットコインやイーサリアムなどの主要プロジェクトへと資金が流れると期待したいとしています。

2.中国版イーサリアムと呼ばれるNEOとは?

NEOCopyright © NEO

NEOは元々Antsharesとして知られており、独特のブロックチェーンアルゴリズムをもちイーサリアムのモデルを改良した物です。またNEOはイーサリアムのスマートコントラクトが持つハッカーにより使用される可能性のある脆弱性を持たないと主張しています。

またNEOにプロジェクト名を変更した後、時価総額は11位まで増加し、8月に入り最高6倍まで高騰し知名度を上げました。

2-1.ICO規制によりNEOが暴落

ICO規制の発表後、NEOの価格は約30%となる10ドル近く下落を記録しました。PBoCのICO規制は中国国内のプロジェクトが対象であり、なおかつ仮想通貨の取引自体が禁止されるという偽の情報が出回った結果のリスクオフによる売りが海外により行われたのではないかと考えられます。

NEO ChartsCopyright © coinmarketcap

2-2.NEOはイーサリアムを超えることができるのか?

日本や英語圏では”NEOは中国版イーサリアムだ”とか”NEOはイーサリアムを超える”などの記述を多く見ます。対して中国国内での認識はどうでしょうか?

Eric氏はあまりプロジェクトのことは詳しくないと前置きを置いた後、

「欧米人 はよく中国版イーサリアムだと語ってるのをよく聞くが、中国国外での記事を見るまで国内でNEOについてそういった概念を聞いたことはありません」

と回答しています。

中国国内での期待というより海外での話題により価格が高騰した様に見える点などにより、日本語記事だけでなく英語記事での内容が間違えている可能性もあり得るため注意が必要です。

2-3.ブロックチェーンプラットフォームのICOは規制対象に含まれるのか

NEOの様に比較的初期に行われた中国の仮想通貨プロジェクトは今回のPBoCの規制に含まれるかは定かではなく、詳細は不明です。ですがEric氏は

「他のプロジェクト同様に何からしらの措置が講じられるべきでしょう」

と述べています。

3.中国で人気のICOプラットフォーム

イーサリアムベースのERC20トークンはコントラクトにより発行されるのに対し、通常のブロックチェーンプラットフォームではブロックチェーンの恩恵を受けることができず、新規発行トークンを”必ず”手に入れることができるとは限りません。

そのため中国ではサードパーティがICOプロジェクトを集めた代行プラットフォームが盛んであり、現在は60サイトにも上ると言われています。

3-1.ICOプロジェクトのリスト化

数多くあるICOプラットフォームは全てのプロジェクトをリスト化しており、規制が今までなかった中KYCを順守していたとEric氏は説明しています。また実際にICOサイトの最大手であるICO.info最近調達した資金を返金すると発表を即座に行いました。

3-2.中国政府による制裁を恐れる

2017年初旬、PBoCがビットコイン取引所を規制したことによりビットコインが大暴落。更に信用取引とレンディングを廃止し、中国の三大取引所に対し行政処分を行いました。この見せしめに対し国内のサードパーティはPBoCによる制裁を恐れてかICO規制に対しては即座の対応を行いました。

多くの投資家はICOトークンに対する返金ではなく保持を望んでいますが、ICOプラットフォームはあくまでPBoCの規制に従うことを強調し返金を行います。

4.中国のICO禁止の詳細

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ICOと聞くと2017年に仮想通貨業界に入った方の多くはイーサリアムベースのERC20トークンを思い浮かべるでしょう。ICOは確かに2017年に入り資金調達額が大幅に高騰しましたがブロックチェーンでは一般的な資金調達方法です。

時価総額第2位のイーサリアムも当初はICOを行い31,531BTC(現在の価格にして約160億円、当時約10億円)を調達しました。

4-1.新規ブロックチェーンプラットフォームも規制の対象

Eric氏によるとブロックチェーンプラットフォームも対象であるとし、更に中国国外のプロジェクトについては

「これは希望としかいえませんが、中国の企業または個人を通して行われていないICOは安全だと思います。」

これはPBoCは国内で行われているICOプロジェクトの件(オフィスが存在しない)などを指摘しているため主に国内プロジェクトに対するものという認識で問題ないと思われます。

4-2.イーサリアムベースのERC20トークン

PBoCは今回の発表に対しビットコインやイーサリアムなどの主要通貨を”仮想通貨”と表現し、ICOした通貨を”トークン”と表現し差別化しています。

4-2-1.ERC20トークンはPBoCは仮想通貨と表記しない?

Eric氏によるとERC20トークンは初期プロジェクトであってもICOトークンであるとしています。また2016年中旬からのICOは主にERC20トークンであり、その大半または全ては今回の規制の対象に成りえる可能性が高いということがわかります。

またこの件に対しては

「ICO規制の内容が明らかになり、この規制による暴落リスクを回避できたら安全に投資できる」

とコメントしています。

4-2-2.BTCCがICOコインを上場廃止

PBoCがICO規制を発表する前、中国の三大取引所で世界最古のビットコイン取引所であるBTCCはERC20トークンの上場廃止を発表。このERC20トークンはBTCCの創設者であるKelin Yang氏がICOプロジェクトとして使用したものでした。

BTCCはPBoCショック以前からPBoCと意欲的に規制に取り組んでおり、定期的に会議を行っていると発言していました。このことからBTCCは事前になにかしらの情報を受け取ったのではないかと考えられます。

5.中国のICO規制の結論と考察

今回のニュースは年始のPBoCショック以来の大きな波紋を中国から呼んだものでした。PBoCの性質としてはまず具体的な内容ではなく抽象的に発表を行い、更に各所とのやり取りを経て規制を行うという体質があります。この点に関してはEric氏も同意であり、上記の様な長期的に見てプラスな要素であると判断している由縁です。

5-1.中国での仮想通貨は未だに黎明期

日本での仮想通貨投資が話題になる中、ブロックチェーン技術に注目するよりも主に利益の面に目を向けられがちです。Eric氏によるとこれは中国も同様で多くの投資家は利益目当てであり、多くは技術を理解していないとしています。

またPBoCショック以来、中国での仮想通貨投資は衰退しておらず、規制によって廃止された信用取引とマージントレードにより出来高は衰退したものの未だに「多くの投資家が興味を持っている」とコメントしています。現に取引所のユーザーは著しく増え、Eric氏が人口が増えたと体感するほどとなっているのが現状です。

5-2.噂による海外の売り

中国国内での反応に反して過剰に反応したのは国外でした。PBoCが規制を発表するたびに”ビットコインが禁止された”とFUDが広まり価格をコントロールしようとする、またはリスクオフによる売りが必ずおきます。

相場は実際の事実より噂で行動することが多いため短期的に見た場合はボラティリティのため、このトレンドに乗っておくのが一番効率がいいということになるでしょう。ビットコイン現物価格は45万円まで断続的に下落した後5万円の回復を見せ50万円まで目前となっています
Copyright © cryptowatch

5-3.情報伝達によるミスリード

情報が世界中に伝達していく中でどんどん実情報がネジ曲がっていき情報の真偽がわからなくなっていくというのは常日頃に起こっています。

例としてニュースサイトのビジネスインサイダーでは

「中国のICO規制は当初の想定よりも大きく、潜在的に全ての仮想通貨の取引を違法とする」

という報道を一部掲載しました。

実際に”中国国内でのICOまたは個人が関わったプロジェクト”が規制対象であるにも関わらず多くの関係のない仮想通貨が下落していることから、今回の内容を正確に把握出来ていないことがわかります。

これらのことから短期的にリスクオフの売りは影響はしても中長期的に見るとライトニングネットワークを控えるビットコイン、メトロポリスハードフォークを直前に控えるイーサリアムは回復を見せると考えられます。

7.ICO規制の範囲まとめ

1.中国国内の企業または個人が関わる国内でのICOは禁止

2.ERC20などのベースアセット及びブロックチェーンプラットフォームのICOも禁止

3.Augurなどの中国企業または個人が関わっていないICOは対象とならない

4.国内でのERC20トークンは4日の発表時点では問題なく取引が可能

8.PBoCの関連記事

中国のマイニング事情とビットコインについて過去にEric氏へインタビューを行っていますのでこちらも参照してください。

現在の中国のビットコイン事情と高騰暴落の危険性

 







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