イーサリアムの最大発行枚数を提案するEIP960がVitalik氏により提案されました。これはビットコインのように2,100万枚の発行制限が決まっているのと違い、このEIP960が実装されると発行制限のなかったイーサリアムには大きな進展となります。本稿では最近話題のイーサリアムASICによるマイニングの中央集権化とEIP960が実装された際のイーサリアムへの影響と今後のシナリオについて分析を行いました。
スポンサーリンク超速報:イーサリアムの開発者Vitalik氏は経済持続可能性を確実にするためETHの最大発行数を設定するEIP960(実装改善提案)を発表。現在の発行数約9900万ETHに対し、1億2000万ETHまたはICO時の販売数の2倍を提案 #イーサリアム #Ethereum #仮想通貨 $ETH #ブロックチェーン #マイニング #EIP960 #Mining https://t.co/xjQfqrfxjM
— 墨汁うまい(Not giving away ETH) (@bokujyuumai) April 1, 2018
1.イーサリアムのASICによる中央集権化問題
イーサリアムは現在、ビットコインと同様のProof of Work(PoW)アルゴリズムを使用しており、独自のEthashを使用しています。これはASICと違いメモリハードであるため一般的に映像処理などの並列演算に強いGPUを使用してマイニングを行います。これによりマイニングの中央集権化を防いでおり、誰でもGPU1枚からマイニングが可能となっています。
現在イーサリアムはASICの販売の可能性とマイニング収益性の問題を抱えており、順を持って確認します。
1-1.Antminer F3(イーサリアムASIC)
俄かには信じ難いですが、ウォールストリートのアナリストの主張によると「BitmainがASIC耐性のあるイーサリアムのEthash用のASICを開発。2018年の第二四半期の出荷のサプライチェーンを準備中である事を確認」噂が現実になるのか? #イーサリアム #Ethereum #仮想通貨 #ブロックチェーン #マイニング https://t.co/8FAm4l50vz
— 墨汁うまい(Not giving away ETH) (@bokujyuumai) March 27, 2018
ASIC耐性を持つイーサリアムのマイニングにおいてASICを販売するというニュースは俄に信じがたいですが、多くの話題を呼んでいます。元のソースと見られる中国のTechNewsの報道によると
「イーサリアムのマイニングに使用されるEthashはGPUに求められる広域のバンド幅を使用するように設計されていると考えられる。BitmainはDRAMバスのバンド幅を増加し、メモリサイズも同様に増加した設計のAntminer F3を近いうちにリリース予定。各3枚のM/Bに6つのASIC専用プロセッサーと32枚の1GB DDR3メモリーとなり、Antminer F3はビットコイン用のS9が512MBのDDR3に対し72GBとなる」
と報道している。
1-1-1.F3の予測されるハッシュレート
明確なソースはありませんが、ハッシュレートはおおよそ200~220MH/sと言われ、3000ドル前後ではないかといわれています。これはAMDのRadeon RX470やNvidia GTX1060が20~24MH/sであることを考慮するとGPUが8~10枚前後と同等となります。
ASICプロセッサによって変わると思いますが、独自に予測を行います。Ethashは元となっているDagger HashimotoのDAGによってASIC対策を行っています。このDAGサイズは常に増加していき、元々マイニングで主流だったR9 280xはハッシュレートを落としていき2017年にはDAGサイズが2GBに達しました。これを考慮してPoSまでに移行するまでには4GB以上のRAMを確保したいと考えるとGPUの12-18台分に相当すると考えることができます。
ASICプロセッサの演算能力は考慮せず考えるとするとハッシュレートはおおよそ240MH/s~432MH/sの範囲内となるでしょう。
*あくまで単純計算であり、多くの要因は考慮していません。
DAGとGPUの関係性については過去のハッシュレート低下問題を参照してください。
1-1-2.ASICとマイニングリグの消費電力
次にマイニングに重要なのは消費電力であるため、イーサリアムマイニングの定番RX470で考察します。公証では120Wであるため12台で考慮すると1440W、CPUはセレロンで十分であり、RAMもOSを動かす程度でいいため通常のリグであれ多く見積もっても1600W~2300Wくらいとなるでしょう。
Antminer F3の消費電力も同様に発表されておらず、不明ですが通常のリグを組むより消費電力を抑えることができれば、ハッシュレートがGH/sのように高くないにしてもAntminer F3はイーサリアムのマイニングにおいて大きな影響を与えることになります。
1-2.EIP-958 ASIC対策のためのマイニング修正
ここ数日話題になっている「ASIC対策のためにフォークを行うか?」という話題に対してEIP-958が提案されました。ですが、このEIPでは改善提案というよりはコミュニティの意見を聞く形に近くなっています。現時点でこのイーサリアムASICによる中央集権化を防ぐためにフォークを行うべきか?という問いに対し、約700のサポートと30の反対票が集まっています。比率にして約95.8%の支持を受けていることになります。
ですが現時点でのAntminer F3への対策などは明確には提案されておらず、ASIC対策としてフォークを支持するかどうかというものだけになっています。Vitalik氏とは別のアプローチでCasper開発を行っているVlad氏が行ったアンケートによると57%が支持し、13%が不支持、10%は複雑だとしています。
Would you support a hard fork that obsceletes ETH ASICs? (Just wondering, this is not a proposal)
— Vlad Zamfir (@VladZamfir) March 28, 2018
1-3.ETHASICが販売された際の問題
現在イーサリアムのハッシュレートは260TH/sを推移しており、2017年の約2.6倍近いハッシュレートを記録しています。大幅に増えるハッシュレートに対し、マイニング収益性は2015年のローンチから過去最低を記録。これはRX470が1枚で24MH/sの時、ドル建てで1日の収益が約76円であることになります。(日本では電気代は通常26円前後であるため国内ではマイナス)最高収益は前回の最高価格付近で1月10日であり約560円であるため約1/8まで下落していることがわかります。
超速報:イーサリアムのマイニング収益は2015年のローンチから過去最低となる0.0318を記録。ハッシュレートは下がらず262TH/s前後を推移しており、これは去年の最低価格の2倍以上となる #Ethereum #イーサリアム #仮想通貨 #ブロックチェーン $ETH #フィンテック #マイニング #Mining pic.twitter.com/dlcHmn3zs7
— 墨汁うまい(Not giving away ETH) (@bokujyuumai) March 31, 2018
マイニング収益が低下する一方マイニングに必要なGPUはNvidiaなどのGPUメーカーのチップ供給不足によりGPU自体の製造が遅れており、現在新規で大量にGPUを購入することができません。価格は4万円前後まで上がっており、マイニングするためにハッシュレートを上げるにはより大きな投資が必要となっています。
2.EIP-960 イーサリアムの総発行枚数を~1億2000万ETHへ制限する
4月1日、イーサリアムの開発者Vitakik氏によりイーサリアムの通貨ETHの最大発行枚数を制限するEIP-960が提案されました。本項に入る前にまず4月1日のエイプリルフールに行なわれているという点、EIPであるという点について軽く触れます。
EIPはイーサリアムの「改善提案」であり、実装が確定しているものではありません。つまり例えジョークだとしてもただの提案であるため真偽を問う必要はないということです。ですがここで重要なのは、ETHの新規発行に関する提案はコミュニティの意見より実装されがちであるという事実です。詳細は現在のイーサリアムのバージョンであるビザンチウムのEIP-649と元のEIP-186の提案を参照してください。
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2-1.ETH発行制限の詳細
Vitalik氏によると
「広域にわたっての複数の環境下においてイーサリアムプラットフォームの経済持続性を確実にするためであると述べており、PoWマイナーが新規コインを発行するのはこれ以上平等にコイン(ETH)を分配またはその他の重要な政策目標を促進するための効率的方法ではない」
とし、今回のEIP-960を提案するとしています。
2-1-1.ブロック報酬の計算
現在のネットワーク全体のETH送料は約9,850万ETHであるため1.2億ETHに制限するとすれば残りの発行枚数は2,150万ETHとなります。新規発行される報酬を一括して「報酬ユニット(Reward Units)」とし、RUと定義した場合
1RU=(1 – CURRENT_SUPPLY/MAX_SUPPLY) ETH
となり、このEIP-960では120,204,432ETHに設定することを提案しているので
1 - 9850万(現在の供給数) / 12,000万(総発行枚数) = 0.17916667ETH
となり、現在のブロック報酬は3ETHであるため
3ETH(ブロック報酬) / 0.1792ETH(1RU) = 16.74RU
と報酬ユニットを表すことができます。1ヶ月後には9,910万ETHに供給数が増え、RUは0.1742ETHに減少するためブロック報酬のETHは
16.74RU * 0.1742ETH = 2.9155ETH
となります。
2-1-2.長期的な影響
このように総発行数は指数関数的に最大発行枚数とブロック報酬は0ETHに近似していくことになります。Vitalik氏によるともしPoWを最大発行枚数になるまでマイニングを続けるとすると744日、約2年毎にマイニング報酬が半減することになると述べています。またイーサリアムのProof of StakeであるCasperに移行した際には大幅にブロック報酬が減り、使用料の手数料(悪意のある攻撃によりスラッシュされたバリデーターも同様)などによって供給量を減らすため0ETHより残ることになるとしています。
2-2.最大発行枚数の提案
この実装はプロトコルを変更する必要があるため、必ずハードフォークを行う必要があります。メトロポリスのPt.2となるコンスタンティノープルで実装するとした場合は1年前後の準備がかかると仮定すれば1ヶ月のETH発行数が60万ETHであるため720万ETHが既に発行されることとなります。つまりRUは
1 - ( 10,570万 / 12,000万 ) = 0.11916667ETH
となるので44%も減少することになります。つまりブロック報酬は
16.74RU * 0.1192 = 1.9954ETH
と大幅に減少してしまうためVitalik氏は144,052,828ETHまたは2015年のICO時に用意したETHの2の倍数に設定するべきだと提案しています。
2-3.最大発行枚数と価格の関係性
実装時期を一度置いておいて残りの発行数を最大発行数と比較してみると1.2億ETHはビットコインの最大発行枚数である2,100万BTCと比較した際のインフレは類似しているという意見もあります。
ビットコインの現在の発行総数は16,951,300BTCであるので
21,000,000BTC - 16,951,300BTC = 4,048,700BTC
405万BTC / 1,695万BTC * 100 = 約24%
対して1.2億ETHの場合は
120,000,000ETH - 98,545,046ETH = 21,454,954ETH
2.1万ETH / 9.9万ETH * 100 = 約21%
もし1.4億ETHにした場合は
140,000,000ETH - 98,545,046ETH = 41,454,954ETH
4.1万ETH / 9.9万ETH * 100 = 約41%
となりビットコインの約2倍となるため1.2億ETHの最大発行数がエコシステム構成にはいいのではないか?という意見があります。
3.イーサリアムが最大発行枚数を設定した際の影響
ではここからはEIP-960が実装された際の影響を考察します。考えられる影響は上記で説明したAntminer F3対策とイーサリアム価格自体の上昇などが考えられます。
3-1.潜在的なイーサリアムASICに対する経済対策
PoWの場合、ハッシュレートがあがるほどマイニング報酬は分散され損益分岐点が切り上がってきます。例えば現在のハッシュレートは2017年に比べて2.5倍以上となっており、損益分岐点は各国の電気代に依存しますが2.5倍の価格になっている事になります。
これを考慮するともしAntminer F3がリリースされたとしても、現在の価格が上がらない限りイーサリアムのASICの購入対象者が減ることになります。またマイニング報酬は指数関数的に減少していくのに対し、価格は比例して上げることはできないため今後出てくる可能性のあるASICを購入するインセンティブはバッチが進むにつれ減っていいくことになるでしょう。またRUは0に近似してく前にCasperへ移行するためGPUのマイニングリグより投資するインセンティブは下がることにより潜在的にASICに対しての対策となります。
Casperの概要については下記を参照してください。
3-2.イーサリアム価格の上昇
現在イーサリアムのマイニング報酬は減少する一方です。マイナーは自身でETH価格を破壊することはなくネットワークの誠実性を保つため、売り圧が潜在的に減っている現状で発行数の制限がされることにより、価格が上昇しやすくなります。マイニングで得られる報酬は限られており、さらにCasper上でバリデーターとしてブロック生成報酬を得るには一定数のETHを保有している必要があります。VCや投資家が今後イーサリアムに投資すると考えた際にはバリデーターを見据えると現在のマイニング報酬が過去最低である現在にはタイミングがよく、現在の下落相場が反転する際には大きな買いが入ると考えられます。
Casperへの移行後にバリデーター報酬を得るにはETHをデポジットし一定期間売れなくなるため、マイナーが自身の割くリソースを維持するための潜在的売りが発生する現在のイーサリアム価格より安定すると考えられます。また発行制限は需要が増えるほどインフレとなることも大きな要因となるでしょう。
4.結論と考察
エイプリルフールではないか?という意見もありますが2017年のVitalik氏のジョークは「Devcon3が北朝鮮の平壌に変更」というもので、Ethereumの公式ブログからでした。今回はEIP上で行っており、最初に説明したAntminer F3の件や現在のブロック報酬減少のオリジナルの提案となるEIP-186での内容を考慮すると発行制限を設けるというのは自然なことであると考えられます。
速報:イーサリアムのDevcon3はメキシコから北朝鮮の平壌に移動になりました
近くていいね(震え声)
#イーサリアム #Ethereum $ETH #ブロックチェーン #フィンテック #エイプリルフール #ジョーク pic.twitter.com/UpGicuwxAo
— 墨汁うまい(Not giving away ETH) (@bokujyuumai) April 2, 2017
また動画でF3によりマイニングを行っている動画なども上がっていますがRAMを72GB積んでるのに対し、今までのAntminer S9などと同じ筐体であるのも疑問がわきます。画面などは画像を表示するだけでよく、ロゴは自身で作成するだけでフェイク動画が作成できるので、この動画でイーサリアムASICの情報が確定ということはできないでしょう。
内容は憶測が憶測を呼んでいるためBtimainの公式発表を待つのが1番でしょう。
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