中国の規制当局により中国三大取引所と大手9取引所を含む12取引所を含む多くのビットコイン取引所が閉鎖、または中国元の取引とデポジットを廃止するも最大手ビットコイン取引所であるCHBTCの声明によると「ビットコイン自体は違法ではない」とし、仮想通貨同士の取引は継続するとしています。
それに続いて中国政府がビットコインクライアントや海外取引所への接続を監視しリスト化、海外取引所での売却を規制するという文章があるとコアデベロッパーのBTCDrak氏が公開し、話題となりました。
イーサリアム・ジャパンではもし中国でマイニングが禁止された際のビットコインへの影響と実際の可能性を中国科学院のDr.Eric Zaho氏と共同し、考察を行いました。
スポンサーリンク目次
1.中国でのビットコインマイニング
ビットコインは元々中国で95%の取引が行われていました。現在では調査によると中国国内でのビットコイン出来高は全体の30%前後となっており、2016年までのOKCoinを中心としたビットコイン価格への影響はUSDが主軸へと変わっていきました。
ではなぜ中国でこれほどにビットコインが人気を博したのでしょうか?それには中国という国の体制と経済を見ていく必要があります。
1-1.中国の海外送金規制
中国から自信の資産を海外へ送金する場合、年間約550万円までという制限があります。これは海外への送金だけでなく、海外からの国内の口座への送金も同様に制限されています。
これをビットコインに置き換えて考えてみると2016年のBitfinexのGOX事件から11倍となったビットコインを保有し、利益を得て更に海外の取引所へ簡単に送金でき、資金をプールできるという点は送金規制の厳しい中国では多大な需要があったことがわかります。
送金規制については下記を参照してください
1-2.マイニングによる利益
取引所に自分の資産を入金し、トレードなどで得た利益を簡単に海外へと逃がすことが可能なビットコイン。このブロックチェーンとビットコインへ未来を感じた中国人は更にマイニングへ目をつけます。
通常ビットコインをはじめとするブロックチェーンを基とした仮想通貨は演算リソースをネットワークに提供することにより報酬を得られます。これには莫大な電気代がかかり、演算機器であるASICのイニシャルコストだけではなく演算パワーに比例して高い電力消費を必要とし莫大なコストがかかります。電気代の安い中国でさえ国内のビットコインマイナーは月に数百万のコストがかかるため必ず一定量のビットコイン現物を売却しなければなりません
中国人マイナーのリスクとコストに関しては下記を参照してください。
2.中国でビットコインと中国元の取引を廃止
中国は10月に行われる党大会の影響か、規制当局であったPBoCとは別の北京インターネットファイナンシャルリスク特別改正チームにより取引所に対し取引の停止、新規ユーザー登録の停止、中国元でのデポジットの禁止を求めました。
これによりビットコイン投資家はビットコインを売却または引出しを強制されました。CHBTCなどの一部の取引所は仮想通貨同士、例えばビットコインとイーサリアムとの取引は”ビットコインが違法ではないため”とし、サービス継続をするとしています。
各取引所ごとの発表と声明は下記記事を参照してください。
2-1.CHBTCとOKCoinが新規ドメインを購入
OKCoinとHuobiは当初ビットコインと中国元の取引サービスを停止すると発表したものの、次のプランとして仮想通貨同士での取引も停止すると発表を行いました。
ですがEric氏によると
「OKCoinは”ok.cn”という新しいドメインを購入した」
とコメントしており、更に
「CHBTCも同様に新しいドメインである”zb.com”を購入」
としています。
CHBTCのURLはchbtc.comですがzb.comにアクセスされると前者のURLへとリダイレクトされることが実際に確認できます。ok.cnは現在アクセスはできませんが今後何かしらの”戦略”があるのではないか?と言われています
またEric氏によるとOKCoinはより大きなオフィスへと移動しており、OKExやOKCoin.comなどの海外向けのサービスへ力を入れるのではないか?と述べています
Bye okcoin pic.twitter.com/veEb8aCUBW
— rainmaker xiong (@xiong1000) September 22, 2017
また現在ビットコインネットワークの2.2%のシェアを誇るBW.COMの親会社であり、今回閉鎖を発表した三大取引所のBTCCやビッグブロック派のViaBTCなども取引所とマイニングプール両者を運営していました。
2-2.取引所が運営するマイニングプールの影響
そもそもマイニングプールとはなんでしょう?マイニングにおけるブロックを発見する能力はハッシュパワー、簡単に言うと演算力に依存します。もし今ビットコインマイニングをノートPCで行った場合、非力な計算力により1日に1ブロックさえ見つけるのは不可能と言えるでしょう(可能性は0ではないが0に極めて近い)。そのためマイニングプールには多くの個人マイナーがそのハッシュパワーを持ち寄り、ブロックのマイニングを行うことで各自に利益を分配しています。
BTCCの様な8.7%のネットワーク比率を占めるマイニングプールであってもプールが独自にマイニングを指定ない限り、提供するサービスを維持できればソロマイナーと異なり問題がありません。
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3.中国国内のマイナーの今後
現時点で中国マイナーが取れる行動は下記の4つになります
1.所持しているビットコインを取引所が閉鎖するまでに元に変え出金する
2.海外の取引所でUSDにし、中国へ送金するまたはUSDで保持
3.現物を保持し続け、OTC取引で維持コスト分を売却する
4.所持しているビットコインを売却し、撤退する
それでは順を追ってみていきましょう
2-1.ビットコインの売却
まずOKCoinの出来高を比較してみると価格上昇により戻ってきた出来高から比較し、最大でも2倍程度であることがわかります。このチャートから見ると中国人ユーザーがビットコインを売却し、撤退をしている様には思えません。
理由としては未だにビットコインコミュニティは存在し、アルトコインやICOにおける”一攫千金”を狙っているまたはビットコイン自体はPBoCが禁止していない点から規制後のライセンス化のもとの復活を望んでいる層が多いということである可能性が考えられます。
2-2.中国は海外取引所へのアクセスを禁止する?
ニュース速報で確認した内容によると日本ではbitFlyerやUSD最大の取引所Bitfinexなどへのアクセスを禁止するというものでした。現時点では特に報告が無い点を見ると検討あるいはFUDであったと中国コミュニティでは考えられています。
この点において香港ベースであるBitfinexでビットコインを売却したとしても、中国国内へ持ち込むには同様に510万円の制限があるため海外取引所での売却と同様に送金制限がかかってきます。
「Bitifinexで取引をしていた友人がいるが、510万円の制限のため中国元資産はなくUSD資産が取引所で眠っている」
と述べています。
2-3.ビットコインのOTC取引でマイニングは継続できるのか?
中国の最大手OTC取引アプリであるBitkanは9月12日に「PBoCによって発表されたICO規制のためサービスを停止する」と発表を行いました。その後個人間で取引ができるLocalBitcoinsの取引が増大、政府によって簡単に取引を知られてしまう取引所よりOTC取引を中国勢が選んでいるということがわかります。
速報:各国のフィアットで安全に匿名で取引できるLocalBitcoinsはOTC取引の最大手Bitkanがサービスを停止し、取引所が閉鎖を初めた結果、出来高が3倍に膨れ上がる。どうやら中国人が使用している模様 #ビットコイン #Bitcoin #仮想通貨 #ブロックチェーン https://t.co/iftnCI1Kc7
— 墨汁うまい(Not giving away ETH) (@bokujyuumai) September 18, 2017
2-3-1.中国国内でのビットコインOTC取引はとてもリスクが高い
OTC取引を続ければマイナーは問題なくマイニングを続けることができますが、Eric氏によると中国国内でのOTC取引はとてもリスクが高いと述べています
「元々取引所でビットコインを購入していた理由として、中国国内でのOTC取引はとてもリスクが高いという理由があります。もしOTC取引をした際、そのマネーフロー内でマネーロンダリングがあった場合、例え関係のない人であっても銀行のアカウントが凍結されるという事例が多くあります。」
2-3-2.OTC取引アプリの大手BitkanとBitpieが撤退
OTC取引でもアプリを使用したものは直接の取引より安全であったのに対し、BitkanとBitpieという2大OTC取引アプリがサービスを終了したため、リスクの高いLocalbitcoinsを使用しなければなりません
速報:中国の最大手OTCアプリのBitkanは、規制に対応しOTCサービスの停止を決定 #ビットコイン #Bitcoin #仮想通貨 #ブロックチェーン #フィンテック $BTC #イーサリアム #中国 https://t.co/YKkx9u8vsW
— 墨汁うまい(Not giving away ETH) (@bokujyuumai) September 12, 2017
3.中国のビットコインマイナーが撤退した際の影響
スポンサーリンクそれではここからは技術的に見た際の中国人マイナーが撤退した場合を考えていきます。まず現在のビットコインのハッシュレートは9,654,663TH/sとなっており2017年はじめから約4倍の上昇を見せています。
3-1.中国でのビットコインマイニングは70%のシェアを占めていた
BBCの2016年の5月の報道によると
「2014年には30%だった中国のマイニングシェアは今では70%にも上る」
しています。5月では約1,400,000TH/sであり約980,000TH/sを中国がしめていたということになります。ですがオーストラリアのマイニングファームや世界中でマイニングが盛んになって来たことを考慮すると現在も7割のハッシュレートを中国が占めているとは考えづらいでしょう。ビットコイン価格の増加と共にマイナーがASICを増やしたと仮定し、3~5割程度の増加だとすると2,940,000TH/s~4,900,000TH/sとなります。
*ここでの注意点は中国のマイニングプールだからといって”中国人マイナーが100%携わっている”わけではありません。よくマイニングプール比率で中国がXX%しめているなどという記事を見ますがこれは全くの間違えで、世界中のマイナーは好きなマイニングプールに携わることができます。元マイニングシェア1位であったAntpoolでは多くの外国人マイナーが携わり、BTCCなども丁寧な英語対応があります。
3-2.中国マイナーが撤退した場合
それではここで仮に約4,900,000TH/sの中国マイナー達が撤退していってハッシュパワーが徐々にまたは急激に下落した場合を想定していきます。中国では盗電をしてまでマイニングをするマイナーさえいるのでギリギリまで違法なマイニングをする可能性が考えられます。ですが最終的にハッシュレートは半分まで落ちると考えると単純にブロック生成時間が2倍になります。
3-2-1.ディフィカルティ調整
ビットコインのブロック生成時間はディフィカルティによって調整され、2016ブロック(約2週間)ごとにハッシュレートにあった平均して約10分ごとにブロックが発見できる様に調整を行います。
簡単に説明すると1000人いて演算を分担しやっと10分で計算できる問題に対し、計算する人が500人に減ってしまうと単純計算で2倍の20分解くのに時間がかかってしまいます。つまりブロック生成時間が大幅な遅れがでてしまうということです。
3-2-2.ブロック生成時間遅延による影響
2016ブロック経過するまでディフィカルティ調整は行われないため2倍の時間をかけてようやく適正なディフィカルティ調整が行われます。
通常10分に1ブロックで1日に144ブロック、報酬は12.5BTCなので1800BTCが毎日マイニングによって生成されています。これは日本円にして41万円計算で行うと約7.4億円が通常生み出されているのですが、ブロックを生成するのに消費するリソースは同じなのに対して報酬は半分の約3.7億円となってしまいます。
この様にしてハッシュパワーの急激な低下は大きな問題を引き起こし、ビットコインコアなどは調整を行うということはないため全世界のマイナーへ影響を及ぼします。
4.ビットコインの中国がマイニング禁止による最悪のシナリオ
ではビットコインにとって最悪のシナリオとはなんでしょうか?
例え中国人マイナーが全撤退としてもビットコインネットワークが停止するということはないでしょう。ですがディフィカルティの調整が入るまでは多くの問題が起きてしまいます。
4-1.中国マイナーが撤退するタイミング
*9月26日追記:本項目4-1の内容はハッシュパワー低下以上にブロック生成時間が遅延(例:ハッシュパワーが1/2でブロック生成時間が2倍以上など)の特定の条件のみ起こるため、実質的には誤差の範囲で収まると考えられます。
もしマイナー撤退がディフィカルティ調整の数十ブロック前で起きたとします。その場合はマイニング報酬減少とブロック生成時間の遅延は数日で終わり何事もなかったように終わるでしょう。ですがもし新しいデフィカルティの期間に入った時の場合はどうでしょうか?
単純計算で2週間が倍の4週間になり、1ヶ月間の間報酬が2分の1となってしまいます。これは中国より5-6倍も電気代の高い日本やヨーロッパでは大きな問題となり損益分岐点を割ってしまう可能性があります。
Antminer S9の場合(日本)
報酬:1日約1,500円前後 30日で約45,000円
電気代:1日約980円前後 30日で約30,000円
ハッシュレート下落後は1日のブロック報酬が半減するので22,500円となり損益分岐点を割ってしまいます。
4-2.ビットコインキャッシュへ一時的に避難
ビットコインキャッシュはブロック生成が遅い場合ディフィカルティ調整が入る様にアルゴリズムを改変しているため一時的に多くの収益目的のみのマイナーが移動することになるでしょう。その場合ビットコインのハッシュレートは更に落ち、1ヶ月のディフィカルティ調整期間を更に伸ばしてしまうという結果を引き起こしてしまいます。
またビットコインキャッシュにはディフィカルティを大幅に下落させた後再度調整期間にはいるためマイナーの切り替えが頻繁に起こり、中期的にビットコインのブロック生成時間に影響を与えると考えられます。
4-3.手数料の大幅な増加
通常マイナーは特別な理由がない限りトランザクションの手数料が高いものからブロックへと書き込みを行います。故に、早く送金を行いたい場合は高い手数料を払い優先的に書き込みを行われようします。大口の送金があった場合ブロックサイズごとの手数料は跳ね上がり、2017年の様な手数料高騰が高騰を起こすという負の連鎖になってしまうでしょう。
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5.中国マイナーが撤退した場合の結論と考察
ライトコインの開発者であり、中国三大取引所BTCCのCEOであるBobby Lee氏の弟であるCharlie Lee氏は信用できる情報元によると「今回のマイニング規制は事実ではない」とツイートをしています。
1/ I have a trusted source that says that there's no truth to China banning mining or network.
FYI, I haven't made any trades on this info.
— Charlie Lee [LTC⚡] (@SatoshiLite) September 22, 2017
またEric氏も同様に、「あの文章が本物であるという裏付けは未だにない」と述べています。
5-1.ノードの監視している可能性は高い
BTCDrak氏のツイートにある文章によると
「マイニングノードを監視し、リスト化し保管。もしもの場合に接続を強制的に遮断する」
とあります。ノードの監視は十分に可能性があり、公に発表する必要はないため警戒しておくべきではあります。ですがFUDによる価格操作である可能性が高いと見るべきでしょう。
5-2.中国がビットコインそのものを禁止する可能性
中国政府は多くのものを禁止しているという事実があります。
「中国はこれまでにGoogle, Youtube, Facebook, Twitter, Gmail更にはゲームの販売輸出入さえ禁止している」
とEric氏は述べています。また更に最近ではカナダの歌手ジャスティン・ビーバーを素行不良として禁止、ソフトチーズの禁止などさえ行っています。その為マイニング禁止さえありえなくはないでしょう。
速報:中国はジャスティンビーバー禁止、ソフトチーズ禁止、ICO禁止に続き化石燃料を使用する自動車の販売を禁止 https://t.co/wxKYpObwNf
— 墨汁うまい(Not giving away ETH) (@bokujyuumai) September 11, 2017
5-3.例えマイニングが禁止されていなくてもマイナーの立場は厳しい
現時点でマイナーがマイニングしたビットコインを換金し、莫大な維持コストを補うには
1.海外でビットコインを売却してUSDへ
↓
2.USDを海外の銀行口座に出金
↓
3.中国へ送金
という3手順を踏む必要があります。中国への送金は最大550万円までしか行えないため、大口マイナーほどこの制限が大きく影響してきます。
中国のある大口マイナーは月に900万円の維持コストがかかるといいます。このマイナーにとっては550万円という制限は1ヶ月の維持さえできず、現在の取引所閉鎖または中国元取引の廃止という状態でさえ厳しい状態であることがわかります。そのためマイニングを禁止していないとしてもこの現在の状態が続いた場合マイニングファームの維持が不可能となり、自然とハッシュパワーが低下または急落してしまう日が来てしまうのもそう遠くないかもしれません。
マイニングコストについては下記を参照してください。
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