ビットコインは現在、年始のPBoCショック以来となる中国の大きな影響を受けています。ビットコイン取引所として最古となる、中国三大取引所のBTCCは9月30日でビットコインだけでなく、同取引所が上場しているイーサリアム、ライトコイン、ビットコインキャッシュを含む全ての仮想通貨の取引を停止することを発表しました。これは一時的なものではなく「9月4日にPBoCから発表されたICO規制を慎重に考慮した結果の停止」としています。
イーサリアム・ジャパンでは元BTCCのCOOで、現BlockstreamのCSOであるSamson Mow氏に政治的観点と技術的な観点から詳しくお話を伺いました。
この記事では前編とし中国の政治的観点にフォーカスしています。
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— 墨汁うまい(Not giving away ETH) (@bokujyuumai) September 14, 2017
目次
1.ビットコインは未だ中国と密接に関係する
2017年1月と2月に世界のビットコイン取引のうち95%を占めていた中国で中国人民銀行、通称PBoCが”過熱するビットコイン取引”を規制し、中国三大取引所のOKCoin、BTCC、Huobiに立ち入り検査を行いました。その際現物取引における信用取引とマージン取引を禁止したため現在はビットコインの取引量は170分の1まで減少しています。
1-1.ビットコインはPBoCショックにより中国の中央集権は終わったと思われた
2017年1月までのビットコインの出来高と現在の出来高を比較すると一目瞭然であり、約170分の1であることがわかります。2016年まではビットコイン価格は中国が決めており、特に取引数の多いOKCoinが世界中の取引所のカバー先となっており、価格の基準となっていました。BTCCは取引数は少ないものの1取引が最大5000BTCで飛び交う世界で最も取引額が大きい取引所でした。
その為PBoCショック後、レバレッジのない中国取引所を基準としようとし一時的に混乱しましたが世界の基軸通貨であるUSDが主軸となり、USD最大の取引所BitfinexがOKCoinの変わりとなり、「中国によるビットコインの中央集権は終わった」と言われていました。
1-2.中国人ビットコインマイナーの存在
ビットコインマイニングのトップシェアは中国でした。理由としては簡単で、ビットコインを代表とするProof of Workアルゴリズムを使用するブロックチェーン通貨は電気代がネックであり、世界で比較した際の電気代の最高額であるデンマークと比較すると約8分の1という安い価格で電気が使用出来るようになっています。
1kW/hの電気代 | Antminer S9 14TH/s (1,372W) | Antminer T9 12.5TH/s (1,576W) | Antminer R4 8TH/s (854W) | Antminer L3+ 504MH/s (800W) |
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中国 | 約4円 | 131.712円 | 151.296円 | 81.984円 | 48.384円 |
インド | 約7円(最安0.1円) | 230.496円 | 264.768円 | 143.472円 | 84.672円 |
アメリカ | 約12円 | 395.136円 | 453.888円 | 245.952円 | 145.152円 |
アフリカ | 約15円 | 493.92円 | 567.36円 | 307.44円 | 181.44円 |
イギリス | 約22円 | 724.416円 | 832.128円 | 450.912円 | 266.112円 |
ドイツ | 約25円 | 823.2円 | 945.6円 | 512.4円 | 302.4円 |
日本 | 約30円 | 987.84円 | 1134.72円 | 614.88円 | 362.88円 |
デンマーク | 約33円 | 1086.624円 | 1248.192円 | 676.368円 | 399.168円 |
代表的なビットコインASICであるAntminer S9で比較すると1ヶ月で約10倍のランニングコストの差が生まれてしまいます。そのため多くのソロマイナーは中国でマイニングしています
詳しくは下記記事を参照してください。
1-3.中国マイナーを懸念した海外取引所のリスクオフの売り
中国はご存知の様に外貨規制で年間合計5万ドル(日本円で550万)以下までとなっています。また浜銀総合研究所の調査によると
「中国国内で得た中国源泉所得を海外送金する際、1件3万ドル(約330万円)以上の場合は国家税務局で合法性の操作を受け、源泉徴収を納付した後、地方税務局で納税証明書を取得して送金銀行窓口に提示しなければ送金できない」
としており、厳しい外貨規制で有名です。そのためビットコインという外貨規制の及ばない送金手段と電気代の安さ、更に非中央集権という思想のもと多大な人気を博しました。
これらの事から取引所が禁止された場合、ビットコインを売却できない中国マイナーが大きな維持費を支払うことができず廃業し、ハッシュレートが大幅に落ちることによるビットコインネットワークへの大きな影響が起きるという考えとマイナーが当面のコストを回収するための売りというインセンティブを警戒したリスクオフの売りが連鎖してしまいます。
2.遂にビットコイン取引所を閉鎖する可能性が高まる
ライトコインの開発者であるCharlie Lee氏は本日のBTCCの全取引停止という発表の前に、「自分が完全に信用している匿名の情報筋によると今回PBoCは最終的にビットコイン取引所を禁止する様だ。」とツイート。このツイート後即座にビットコインは下落」し、「ショートを入れて発言をしただろう」という多くの批判を受けこのツイートを消去しました。
ライトコインの開発者によると「自分が完全に信用している匿名の情報筋によると今回PBoCは最終的にビットコイン取引所を禁止する様だ。自分がアドバイスできるのは売ったりせず保持すること!」としています #ビットコイン #Bitcoin #仮想通貨 #ブロックチェーン #中国 https://t.co/ehaFHFP0Bg
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Charlie氏は世界で最古のビットコイン取引所であるBTCCのCEOであるBobby Lee氏の弟で、更にライトコインはBTCCに上場されているため何かしらの情報を取引所またはBobby氏から受け取った可能性が考えられます。
更にBTCCのツイート後、OKCoinとHuobiは規制当局から指示は受け取っていないというツイートを否定し
「OKCoinとHuobiは規制当局と明日ミーティングを行う」
とツイート。これによりビットコイン価格は更に3万円下落を記録。ビットコインネットワークにおける大きな進歩であるSegWitアクティベート時の価格を下回りました。
超速報:ライトコインの開発者によると「OKCoinとHuobiは規制当局と明日ミーティングを行う」とのこと明日の発表次第では大きく下落する可能性が考えられます #ビットコイン #仮想通貨 #Bitcoin $BTC #ブロックチェーン #中国 #OKCoin #Huobi https://t.co/bPsFa0c9we
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3.中国共産党大会による政治の影響
スポンサーリンク約1ヶ月後の10月18日、中国共産党による第19回党大会を開催を行います。この党大会を意識したものか、三大取引所がベースとする北京の地方行政はビットコインをはじめとする仮想通貨を規制する北京特別対策チームを編成。PBoCよりも厳しい内容の規制を発表しました。
詳しくは下記を参照してください
3-1.中国政治によるビットコイン規制の可能性
Samson氏は党大会におけるビットコイン規制に踏み切ったのではないかという件に対して
「ビットコインを規制するという点は党大会に注目が集まるため、政治における影響を受けていることは大いにありえる」
とコメントしているものの中国国内での規制はいつも複雑な事柄が絡み合っており、結果を見るまでわからないと補足しています。
また中国のビットコイン事情に詳しいcnLedgerとして有名な中国科学院のEric氏なども度々発言しているように
「ビットコイン取引所の規制は中国での規制を他国が参考するのに最適な道のりであり、中国国内の取引所は協力して行っていきたい」
とし、ビットコインの未来を考えた際に重要なことであり、例え短期的に下落が続いてもあるべきものであると述べています。
3-2.ビットコイン取引所の規制は一時的な可能性は拭えず
ICO規制時のEric氏へのインタビューと同様に、元々ビットコイン取引に関する明確なガイダンスは存在しておらず、将来的にビットコイン取引所が問題なく営業を行うことが出来る可能性はなくなっていないことを示唆。
ライセンス制による規制である可能性は残っており、規制の明確化が重要であるとしています。これはICO規制の延長上でもあり、各規制当局が懸念する点を中国のICOプラットフォームは体現しており、今回のBTCCの取引停止を決断する大きな理由となっています。
ICO規制に関するインタビューは下記記事を参照してください。
4.結論と考察
ビットコインネットワークはマイナーによるビットコイン政治を経て長年のスケーリング解決策であるSegWitを導入。送金手数料の改善などの開発面における進歩で大幅な価格上昇を記録していました。対して予想だにしない中国の政治の煽りを現在受けています。
4-1.中国のビットコイン規制当局は3つ存在する
現在中国では地方行政を含む3つの規制団体が存在します
1.中国の中央銀行であるPBoC
2.取引所を規制する中国証券規制委員会
3.北京特別対策チーム
それぞれの考えるビットコインに対する規制目的は違っており、PBoC以外は完全にビットコイン取引を禁止したいといますが、対してPBoCは法の規制の基ビットコイン取引を許可したいという意思があります。
ですが全機関に共通することはビットコインと仮想通貨における大きな金融リスクであり、投資家保護における観点から抑制したいという点です。その内容に政治色が強くでており、党大会後までは大きな影響を受ける可能性が考えられます。
中国のビットコイン事情まとめ:現時点で出て来る規制当局は
1.PBoC(中国人民銀行)→法の基取引所の運営許可
2.CSRC(中国証券規制委員会)→全ての取引所を閉鎖したい
3.北京特別対策チーム→厳密に取引を禁止後取引所を閉鎖したい#ビットコイン #仮想通貨 #中国 #ICO https://t.co/EhHAMqsywd— 墨汁うまい(Not giving away ETH) (@bokujyuumai) September 13, 2017
4-2.ビットコインコアが最新バージョンの0.15をリリースする
この中国の煽りを受けて下落した後、ビットコインのクライアントを開発するビットコインコアはSegWit2xのノードの接続を切断する実装を行った最新バージョンを遂にリリース。
ビットコインネットワークの開発面でみると2MBハードフォークについてコアデベロッパーが明確な表明をし、SegWit2xという問題のあるハードフォークを回避したため大きな進歩となっています。
ですが上記に説明した様に中国のビットコイン事情の懸念により短期的には売りが続き、OKCoinとHuobiまたは規制当局の発表次第では更なる下落が予測されます。
速報:ビットコイン コア0.15がリリースされました。今回のバージョンよりSegWit2xのクライアントが使用するbits6からbits8までの接続を2018年8月1日まで切断します #ビットコイン #仮想通貨 #Bitcoin $BTC #ブロックチェーン #SegWit2x https://t.co/oPrmH7RyKy
— 墨汁うまい(Not giving away ETH) (@bokujyuumai) September 14, 2017
ビットコインコアのSegWit2xノード排除については下記インタビュー記事を参照してください。
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