アルトコイン暴落の引き金を引いたイーサリアムのマイニング問題

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アルトコイン暴落の引き金を引いたイーサリアムのマイニング問題

イーサリアム価格は2016年のDEVCON2の0.0220BTC/ETHという価格から0.0073BTC/ETHまで3分の1に下落した後、エンタープライズイーサリアムのリークにより徐々に回復をみせ、更にはFX層から一般層までの資金流入により6月には0.1529BTC/ETHを記録し、20倍以上の高騰となりました。

イーサリアムが0.152という高値を記録

©Cryptowatch

イーサリアムの技術力とサードパーティの応用は現状のブロックチェーンベースの仮想通貨において秀でており、正当な評価ではあると思いますが、現状のネットワークは大きな問題を抱えており下落しています。

7月末現在、イーサリアム価格は0.1BTC/ETHを切っており、マイニング問題を起因としたネットワークの危機を迎えています。前提知識としてマイニングリグの構成を知っておく必要があるため、イーサリアムのマイニングリグを作成する記事を先にご覧になることをオススメします。

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1.イーサリアムのマイニング

イーサリアムはビットコインと同様にProof of Work (以下PoWとする)を採用しており、ディフィカルティボムによるアイスエイジの影響などによりProof of Stake (以下PoSとする) への移行を目指しています。現在のイーサリアムのバージョンはホームステッドで、近々に控えている大型アップデート”メトロポリス“を経て、完成形であるセレニティへと移行します。2016年にはプロトコルのバグを利用したスパムアタック、DappブラウザのMistの重大なバグ、さらにはイーサリアムコミュニティの個人情報流出などの大事件が次々と起こりましたが、開発はまだ半ばだということです。

1-1.イーサリアム用のASICが存在しない理由とEthash

現在のホームステッドではEthashというイーサリアム独自のPoWアルゴリズムを採用しています。これはDagger Hashimotoアルゴリズムというのを元に改良したものです。

イーサリアムはビットコインの様なASICによる中央集権的マイニングを避けるためDAGの計算をメモリで行うことによりメモリ消費が激しく、ASICでのマイニング不利となっています。

Ethash

1-2.Raden RXシリーズによるイーサリアムマイニング

前回のマイニングリグ作成を前提知識とし、現在イーサリアムネットワークが抱えている問題について説明していきます。イーサリアムマイニングの基礎知識がない、またはマイニングリグとは?という方は先に下記記事を御覧ください。

イーサリアムのマイニングリグを正しく構築する

 

イーサリアムのマイニングはOpenCLで実装されているため、NVIDIAよりAMDの方が効率よくマイニングでき、Radeon RX470, 480シリーズが鉄板でした。今年に入りAMDはRadeon RX570, 580を新たに販売し、海外でも同様に完売状態となっています。

2.イーサリアムネットワークが抱えるマイニング問題

現在6月末現在、イーサリアムネットワークのハッシュレートはRX500シリーズの発売とGPUを13枚搭載可能なASRock H110 Pro BTC+の発売により、新しいリグが完成した影響か65TH/sを推移しており、安定してそのハッシュレートを伸ばしています。

イーサリアム ハッシュレート

Copyright © 2017 Etherscan

2-1.DAGファイルの増加

AMD Radeon RX460 2GBというグラフィックボードがRXシリーズにはあり、2GBというメモリは去年末にマイニング使用は廃れRX470 4GBなどが主流となっています。

現在イーサリアムネットワークはEpoch134で、DAGサイズは2.0469となっています。これは年間でおおよそ0.73倍となり、2018年初旬に3GBのリミット、2019年中旬に4GBのリミットが来ると言われています。

DAG

2-2.AMD Radeon RX400/500シリーズのハッシュレート低下

イーサリアムをマイニングする際、クライアントとマイナーはDAGファイルを次のEpochに向けて計算しています。DAGファイルの増加により去年R9 280x 3GBはそのハッシュレートを徐々に落としていきました。

BIOS MODは除いて25MH/s~だったハッシュレートが現在では44%下落した14MH/sと徐々にハッシュレートが下落しています。

2-2-1.AMDのグラフィックボードの特性

AMD Radeon GPU

© Copyright 2010 Advanced Micro Devices, Inc.

DAGによりメモリー消費が激しい特性であり、かつDAGファイルはEpoch毎に増加していきます。

演算ユニットのプライベートメモリーは最初にレジスターに置かれ、もしレジスター内のキャパシティ以上のプライベートメモリーを使用する際、またはダイナミックインデックスがプライベート配列で使用される場合、オーバーフローデータはスクラッチメモリーに格納されます。このスクラッチメモリーは上記図のグローバルメモリーの部分集合であるプライベートメモリーであるため、演算パフォーマンスは劇的に低下します。

とあり、DAGEpoch毎に増加していく特性上、プライベートメモリーを超えることによりハッシュレートが劇的に減少する可能性があり、R9 280xが3GBという余裕があるのにハッシュレートを減少した原因ではないかと考えられます。

 

AMD_GCN3_Instruction_Set_Architecture_rev1.1
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2-2-2.メモリーバンクによる原因の可能性

AMDの特性とDAGサイズの増加のみで見るとハッシュレートが低下するのはRadeon RX470/480 4GBとRX570/580 4GBだけの様に思えますが、RX480 8GBでのハッシュレート下落報告がありました。

 

マイニングクライアントのGenoilによると

DAGが最初のメモリーバンクの2GBを超えて2つ目のメモリーバンクも使用する場合ハッシュレートが大幅に下落する」

 

という報告があり、マイニングクライアント最大手のClaymoreのデベロッパーは

「ハッシュレート低下を確認したので、可能な解決策を探したがAMDのPolarisアーキテクチャでの不具合の様で、このハッシュレート低下をマイナーソフトウェアレベルで解決することは現時点ではできません。」

 

2-3.Epoch毎のハッシュレート低下予定表

下記表を見るとEpoch128を見るとDAGサイズが2GBに到達したことがわかります。Epoch128は2017年6月2日に迎え、Epoch130にはハッシュレート下落が確認されはじめました。現在イーサリアムネットワークのハッシュレートは増加していますが、新たなEpoch毎に平均ハッシュレートが下落していることが確認されています。

ブロックナンバーDAGサイズEpochDAG (byte表記)ハッシュレート
34500001.9063 GB116204687450430.32
34800001.9141 GB117205525901630.32
35100001.9219 GB118206364352830.32
35400001.9297 GB119207202804030.32
35700001.9375 GB120208041255230.32
36000001.9453 GB121208879706430.32
36300001.9532 GB122209718157630.32
36600001.9610 GB123210556608830.32
36900001.9688 GB124211395060030.32
37200001.9766 GB125212233511230.32
37500001.9844 GB126213071962430.32
37800001.9922 GB127213910413630.32
38100002.0000 GB128214748864830.32
38400002.0078 GB129215587316030.18
38700002.0156 GB130216425767230.03
39000002.0234 GB131217264218429.90
39300002.0312 GB132218102669629.74
39600002.0390 GB133218941120829.58
39900002.0469 GB134219779572029.40
40200002.0547 GB135220618023229.21
40500002.0625 GB136221456474429.00
40800002.0703 GB137222294925628.79
41100002.0781 GB138223133376828.52
41400002.0859 GB139223971828028.26
41700002.0937 GB140224810279227.98
42000002.1015 GB141225648730427.68
42300002.1093 GB142226487181627.39
42600002.1171 GB143227325632827.05
42900002.1249 GB144228164084026.75
43200002.1328 GB145229002535226.43
43500002.1406 GB146229840986426.08
43800002.1484 GB147230679437625.74
44100002.1562 GB148231517888825.44
44400002.1640 GB149232356340025.09
44700002.1718 GB150233194791224.74
45000002.1796 GB151234033242424.00
45300002.1874 GB152234871693624.40
45600002.1952 GB153235710144824.07
45900002.2030 GB154236548596023.73
46200002.2108 GB155237387047223.37

Epoch155ではハッシュレートは23.37MH/sまで下落してしまいます。

 

3.イーサリアムマイナーへインタビュー

イーサリアム・ジャパンはマイニングリグ構築記事の写真とアドバイスを頂いたイーサリアムマイナーのAuriga氏へインタビューを行いました。

3-1.イーサリアムのハッシュレート低下について

このハッシュレートの低下は6月中旬に大きく拡散され多くのマイナーに問題として認知をされました。Auriga氏がこのハッシュレート下落問題に気づいた際0.5MH/sの低下であり、大きな収益の下落を受けたわけではありませんが今後の問題悪化を考慮し、イーサリアムのマイニングからZcashのマイニングへと切り替えました。

ZcashはNvidiaのGeForece GTXシリーズの方が効率がよくRXシリーズでは不利となりますが現時点での収益を計算した場合、現在の価格の下落を考慮すると大差はないためです。

3-2.ETH現物を売却

このハッシュレート下落問題が引き金になりイーサリアムは下落を開始しました。

Auriga氏は

「現在イーサリアムのハッシュレートは去年から6倍の増加を見せており、今日多くのメディアがマイニング記事を取り上げマイニング人気が加熱しています。これはマイナーの競合の増加によるディフィカルティの上昇により、マイニング報酬の減少を懸念しマイニングした報酬のETHをホールドしていましたが、全ETHを売却しビットコインにしました。」

と述べています。

3-3.今後のマイナーの動向

Auriga氏は主にRadeon RXシリーズのマイニングリグを複数台所有していますがGPUの買い替えを検討していないといいます。理由としては日本は世界水準でトップレベルの高さの電気代となり、マイニングリグの回収は他の電気代が安い国(中国は日本の約6分の1)に比べロングランが前提となります。

マイナーの損益分岐点はかなり低いですがGPUをリグごと買い替えとなると巨額のコストが必要となり、更に価格の下落を含めると大きなリスクを伴います。そのためAuriga氏は”GPUの買い替えは全く考えていない”と述べています。

マイナーのリスクと電気代については下記記事を参照してください

現在の中国のビットコイン事情と高騰暴落の危険性

4.結論と考察

現在のアルトコインの下落はイーサリアムが引き起こしたと言っても過言ではないでしょう。2017年アルトコイン市場は実際の開発に対し、期待が高まりすぎたためによる大幅な価格の高騰を記録、高騰と下落はお互いに影響しあうようになりました。

4-1.イーサリアム価格への影響

Copyright © Cryptowatch

Poloniexでのチャートを確認するとEpoch128の6月2日付近で一度下落し、その下落を狙った買いにより再度高騰し最高価格の0.152BTC/ETHを記録しました。6月中旬にマイニングメディアがとりあげたことにより多くのマイナーがETHを売却し、現在は0.1BTC/ETHを切っています。

このハッシュレート低下問題はアルゴリズムの特性上必ず起こるものではありますが新規発売したRX500シリーズまで影響を受け、なおかつこのメモリーバンク問題で2GBというサイズにははじめて直面する問題であり、多くのマイナーがAuriga氏の様に売却したのではないかと考えられます。

4-2.Zcashのハッシュレート上昇

zcash hashrate growth

Copyright © 2017 Coinwarz

Auriga氏がZcashのマイニングに移った様に問題を確認したマイナーは同時期の6月初旬からハッシュレートを上昇し、わずか1ヶ月で2倍のハッシュレートとなっています。

4-3.夏枯れへの突入

大きな問題がイーサリアムの下落の引き金を引き、更にアルトコインを巻き込んでの下落を見せています。通常株式市場などは夏になるとトレーダーや投資家が長期休暇をとり旅行などに行くため出来高が減ってしまい、通常これを夏枯れと呼びます。

ビットコインをはじめとする仮想通貨市場は14h365日ですが例外ではなく、去年2016年の夏も大きな影響を見せました。そのため今年も同様のことが考えられ、2016年年末のアルトコインの氷河期へと再度突入する可能性が考えられます。

4-4.イーサリアムクラシックへの影響

ethereum classic hashrate growth

イーサリアムクラシックは去年イーサリアムからフォークしてできたコインであり、全く同様のアルゴリズムを使用しています。そのため同様に6月中旬にハッシュレート低下の記録を示しており、マイナーがイーサリアムクラシックへとマイニングを切り替えることはないため同様にリスクを抱えています。

イーサリアムクラシックはイーサリアムとは違いProof of Stakeに意向しないためこの問題を改善する必要がありますが、開発は全く進んでおらず問題をたくさん抱えている情況となっています。

5.DAG問題の解決(10月16日追記)

本項の問題点は既に修正されていますので、下記を参照してください。

10月16日イーサリアムのメトロポリスハードフォークの重要な事







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